没ネタ供養(ぐれみつ)

没というか、ちゃんと頑張りたい気持ちはあるのですが……。
一度逆行ネタというのを書いてみたくて取りかかったお話です。引退直後の木暮さんが一年次にタイムスリップ(?)してグレる直前のミッチーに再会し……という構想でした。
本文は続きからどうぞ。

 自動ドアから転がるように飛び出してきた子供が、木暮の右足に勢いよくぶつかった。その衝撃にはっとして、慌てて体をずらす。
「すみません」
 なんというところで物思いに沈んでいたのだろう。咄嗟に後ろを振り返ると、松葉杖をついた中年の男が迷惑そうに眉を顰めていた。
 午後一時をやや回った頃合いの野口総合病院のエントランスは、午後の部の外来診察を待つ患者や、入院患者を訪ねる見舞い客で賑わっている。かっと熱を帯びた頬を隠しながら、木暮も慌ててその集団へと紛れ込んだ。
(そうだ、俺も見舞いに――)
 そう、見舞いに。
 誰の?
(誰の見舞いだ?)
 ふと脳裏に過ぎったその疑問に、熱を帯びていた頬がさっと青くなる。
(誰のって、そんなの……)
 そんなの、決まっているじゃないか。
(三井だ)
 そうだ、三井だ。
 三井寿。
 同じバスケットボール部に所属する同級生だ。左膝を痛め、一度はバスケを辞めて学校にもほとんど顔を出さなくなっていたが、最近になってひと悶着のすえやっとまた部へ戻り、先だっての湘北高校バスケ部インターハイ初出場にも大きく貢献してくれた。彼の力が無ければ、翔陽や陵南という並み居る強豪を破っての大番狂わせは叶わなかっただろう。
 そして、あのインターハイだ。
 入賞にはあと一歩及ばなかったものの、あの山王工業高校を破る大金星をあげて、木暮の高校生活最後の夏は幕を閉じた。
 大輪の花火のような夏だった。勢いよくあがって、おおきく弾けて、あっという間に消える。
 そして、そんな非現実的なまでに目まぐるしかった日々が、ほんとうにひとときの夢だったかのように、いまは受験勉強という名の現実と戦っている――。
(――あれ?)
 唐突な違和感に、頭がくらりとした。
(三井は、いま)
 三井はいま、秋季国体とウィンターカップに照準をあわせて練習に励んでいるはずだ。大学推薦をもぎとるため、一つ下の宮城に目の上のタンコブと煙たがられながらも、それでも活き活きと、ようやく取り戻したバスケを目一杯、全身で楽しんでいる。
(こんなところにいるはずがない)
 そうだ。
 三井の膝は完全に治ったのだ。ほかでもないこの病院で完治のお墨付きを貰い、インターハイの予選と本戦をほぼフル出場で戦い抜いた。
 こんなところにいるはずがない。
 病院になど、まして、入院などしているはずは――。
 ぞわりと鳥肌が立った。
 キツい冷房が肌を舐め、ぶるりと背筋が震えた。足元がぐらぐらと揺れる。
(おかしい)
 なにかが決定的におかしかった。
 まるで、ひどい乱丁本を読んでいるような気分だった。あるべき場所にあるべきページがなく、ずっと昔に読んだはずのページが再び唐突に差し込まれたような。
 自分はいったい誰の見舞いに来たのだろう。
 インターハイの山王戦で背中を負傷した桜木花道か。けれど彼が入院しているのはこの病院ではない。ここへは三井の見舞いでしか訪れたことがなく、家族や見舞いに来るほど親しい親戚でかかりつけにしているものもいないはずだった。
 震える足でエレベーターへ向かい、記憶を手繰りながらボタンを押す。
 年代物のエレベーターが、チン、と高い音を立てて開く。
 白い壁と、薄緑色の廊下。
 一歩踏み出すと、スニーカーの靴底と床材が擦れて短いスキール音が鳴った。体育館で聞くそれとは違う、耳障りな高音。
 痺れたように動かない足をたどたどしく踏み出し、記憶にある病室を探した。確か、三○六号室。バスケット用品で賑やかに飾られた個室の情景が印象深くて、いまだによく覚えている。一度目の入院のときには、見舞いの品を携えて何度も足を運んだ。二度目の入院のときには、確か、たったの一度顔を出したきりだったように思う。
 ――三井寿。
 あった。そう呟いて、壁にかけられた名札を指先でなぞる。見間違いようもない。三井寿と、確かにそう書いてあった。
(まさか、な……)
 まさか、そんなこと。あるはずがない。
 目の前の現実を否定するように胸の中で繰り返し、眼鏡を外してきつく眉間を揉んだ。扉は閉まっており、中の様子は覗えない。開いていたところで、中を見るような度胸はなかった。
 だって、もしそこに三井がいたら。
 なんてタチの悪い夢なのだろう、と頭を振った。これはきっと夢だ。夢に違いないが、なぜいまさらこんな夢を見てしまったのか。
 自分の夏は、もう、終わったのだ。
 大学では、もうバスケットを続けないつもりだった。スカウトを狙って部に残った三井や、一般入試で強豪校を目指すことに決めた赤木とは違う。続けるにしても、部活動としてではなく、たまの息抜き程度にボールを触れればそれでよかった。
 未練はない。中学から数えれば六年間もの間、分不相応な夢を描いて、ただ全力で走り続けてきた。そして、走り抜いたのだ。
 そんな日々を恋しく思う気持ちはもちろんある。だから、こんな懐かしい景色を夢に見たのだろう。
 あの時、小暮は高校一年生だった。
 小暮も、赤木も、三井も、高校一年生だった。これから先になにが起こるのかも知らず、きらきらしい未来に胸を躍らせていた。ただがむしゃらにバスケのことしか考えていなかったのだ。
「――木暮?」

※※※

……と、ここで力尽きました。
一年次にタイムスリップとなるとエピソードの九割くらいを捏造しなきゃならないというのがあまりにもネックで(あと赤木・木暮・三井以外の部員とか)、それに加えてバスケ部の部活風景とか原作にない試合の内容なんかも書かなきゃだよなあ……と思ったらもうだめでした。無理無理無理。

~以下、わたしの脳内にしかない続き(箇条書き)~
~しかもなぜかフレーバー程度の仙三・流三要素があります~

構想としては冒頭に書いたとおりで、そこからはもうベタな流れなんですが……※長いです
・木暮さんがミッチーの病室抜け出しを叱る
・ミッチーびっくりして泣き出す
(=同級生に真剣に怒られたり心配されたことがなかった)
・急速に打ち解ける二人と、それが面白くない赤木
(三井⇔赤木⇔木暮は友情止まりだがやや三角関係気味?)
・某襲撃イベント(?)ルートを回避した分精神的に弱いところの抜けないミッチーが、どんどん木暮に依存していく
(はじめて「取り巻き」じゃなくて「友達」ができた的な?)
・木暮も、本来の世界とは違って学校生活でも人の輪の中心にいる人気者ミッチーに劣等感や独占欲を感じはじめる
・そんなミッチーが「俺、お前といるのが一番楽だ」とか言って疲れた顔で木暮とひっそりお弁当食べたりするので、木暮はどんどんミッチー沼(?)から抜け出せなくなる
・夏はリハビリに専念して試合には出られないミッチー、冬はベンチ入りするもさっさと敗退してしまい活躍の場はなし
・会場で牧や藤真の活躍を見て劣等感を募らせるミッチー
・双璧の活躍や赤木の成長などを実際に目の当たりにすることで、グレていた頃以上に精神の不安定さが増していくミッチー
・が、それを見せられるのは木暮の前でだけ
・木暮はそれを嬉しく思うが、目の前の三井であって三井でない存在に次第に戸惑いを覚えていく
~ここまで一年次~
~ここから二年次~
・赤木とミッチーの対立構造は相変わらずで、グレ期の物理的な距離感がない分ミッチー側の劣等感がどんどん積み重なっていく
・赤木も木暮と違ってなんでもずけずけ言ってくる、そのうえバスケの実力も確かな三井にアンビバレントな感情を抱きはじめる
(プレイヤーとしての憧れと、同級生としての嫉妬・反発心)
・この辺で激突する赤木と三井だが、正面衝突ではなく木暮を介した冷戦的な感じ(?)
・具体的には、互いに木暮を分の味方につけようと取り合いっこする感じ
・三井「やっぱりお前も期待外れだって思ってるんだろ!」
・木暮「誰がそんなこと言ったんだよ」
(これは多分上級生あたりが陰でこそこそ言ってる)
・三井「俺だって頑張ってる! 頑張ってるのに……!」
・この話のミッチーは木暮の前でだけ甘ったれなのでとにかく泣く
(=本編のミッチーはその「俺だって」が言えなかった・同級生の前で弱味を見せたり泣いたりできなかったからグレちゃったのかな~なんて)
・木暮の執り成しからなにかミッチーが赤木の実力を認めるようなイベントがあって(雑)、二人のコンビプレーが徐々に出来上がっていく
(この辺で夏の大会?)
・そうすると、今度は木暮はそんな二人のコートの中でだけ見せる強い信頼関係に嫉妬めいた複雑な感情を抱きはじめる
(それを表には出さないから余計こじれる)
・が、この調子でいけば今度こそ三人で順当にやっていけると希望を持ち始める木暮
(若干の現実逃避……?)
・この辺で明確に木暮→ミッチーの恋愛感情があきらかになる
・動揺と自制心から距離を置きはじめる木暮に、今度はミッチーのほうが不安と猜疑心に駆られはじめる
(かなり共依存的な関係)
・ミッチーが膝の調子を崩し、いよいよ精神的に不安定になる
(精神面に引きずられただけで、ちょっと静養が必要な程度)
・なんやかんやあって冬の大会直前
・不安から過剰に練習へ打ち込むミッチーと、それを歯がゆく思いながら声を掛けられずにいる赤木
・木暮が赤木に苦言を呈され渋々声をかけると「赤木に言われてきたんだろ」とますますこじれる二人
・なんやかんやあって(雑)キスくらいまで行く
~この辺でいきなり暗転(?)~
・木暮がはっと目を覚ますと、どこかの試合会場
・相手は陵南、すごい一年が入ったらしいという話を赤木からされる
・仙道か、と思い至って相手方のベンチを見渡すと、そこには見慣れた人影が……
・ここで、これまでとは別の世界線(?)に飛んだと察する木暮
・なんやかんやあって試合後
・男子トイレとか、そんな感じの人影が少ないところで仙道と三井を見つける木暮
・木暮を見つけた仙道が、いきなり三井にキス(!)する
(ミッチーは木暮に気付いていない)
・その場は鉢合わせずに済むが、後々仙道が木暮に話しかける
・「この世界では、あの人は俺のもんですよ」
(=仙道だけがこの謎ループに気付いている)
・戸惑う木暮に、仙道が畳みかける
・「俺たちのプレー見ました? すごかったでしょう」
・「あの人、あんな楽しそうにバスケする人だったんすね」
(答えられない木暮)
(振り返って、自分は三井が苦しんでいる姿ばかり見てきたと思いはじめる)
・「俺のもんでいたほうが、幸せだと思うんだけどなあ」
・「どう思います? 木暮サン」
・「でも、この世界ももう終わりみたいだ。あーあ、楽しかったのにな」
~またまた暗転~

……と、ここから先のオチも思いつかず。
なんていうか、風呂敷広がりすぎ~!ぜったい無理じゃん、書くの。
こうやって書き出してみるとなんかベタだし。
木暮さんに依存するミッチーが書きたかったんです。そして最終的にはあの挫折も最終的にミッチーの糧にはなってるよね、って綺麗にまとまればいいな~って、いう、志半ばですね……。
根本的に向いてないんだなよあ、長編。そもそも論として。
あ~才能が欲しい~!神様~~~~~~!

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